日本人は、自分が生まれた家族よりも自分の家族を持つことが重要であり、その自分で作った家族が心のよりどころとなるもので、それによって社会的信用が得られると考えているのだろうか?
日本人のライフスタイルアンケートの中で、結婚のプラス面の結果を見て2と5がおもしろいと思った。
1. 子供や家族をもてる 64%
2. 心のよりどころが得られる 50%
3. 夫婦で互いに高めあい、人間として成長できる 41%
4. 好きな人と一緒に生活できる 37%
5. 社会的信用が得られる 29%
これは、結婚によって同姓にして戸籍を新しく作ることに起因しているように思う。つまり、自分達の戸籍を持つことが一人前になるという意味だと思っているからではないだろうか?親は子供を結婚させて戸籍を独立させるまでが親の責任と思っているからではないだろうか?
結婚して子供を育てることは人類として大切なことであり、それが自分達の戸籍を持って夫婦同姓にするということと同義ならば戸籍を持つことは重要だ。確かに、子供がいたら同姓のほうがいいこともあるだろう。だが、30年前とは違って、結婚すること=子供を育てるでもなければ、妻=専業主婦ではなくなってきているのだから、同姓の戸籍をもつことが全ての夫婦に必要なわけではない。
終身雇用制度で年功序列の会社で出世することが当たり前だった時代、会社の上司が結婚を薦めてお見合いをさせ、お仲人を務めるのが普通だった。そうして出世していくことが、社会的信用だったのは昔のことだ。今は、未婚だから何か問題がある、出世できない、というわけではなくなっている。
戸籍というものがあって姓を変えることから、嫁にやり、嫁にもらうために、結納を交わし金銭をやりとりしたが、今はそういう結納は減ってきている。嫁にいくと言っても大家族で暮らすわけではないし、女性も自分で仕事をもって収入があるようになったからだろう。それに、男性のほうが収入が少ないかもしれず収入の少ないほうからお金をもらうのも難しく、夫が妻を養うという考えもおかしいし、そんな昔の習慣に従って、昔の習慣どおりに家の嫁は家のもので家のしきたりに従ってもらいます、なんて強制される方が嫌だろう。昔は「男は家を造り、女は家庭を作る」といったが今は二人で家も家庭もつくるのだから。にも関わらず、いまだに夫の姓の家に嫁に行くという古い家制度の考えが、女性の姓の変更を強制させるのだ。
そしてその古い家制度の考えが、男女間の不平等を悪化させる。世界経済フォーラムの男女平等ランキングの発表によると、日本は130か国中98位で、しかも2007年の91位や2006年の80位よりも下がっている。だいたい先進国のランキングは高いのだが、日本は先進国ではかなり下だ。なぜ他の先進国は高く新興国は高い中、日本は低いのだろう?男女雇用均等法を作り、婚姻時の姓は夫婦どちらでもいいことになっているのに、このような結果が出、女性の97%が改姓している現実が人の意識がまだ変わっていないことを示している。
大多数の人は結婚で女性が改姓するのが当たり前という思って変えるのだろうが、結婚で姓を変えたいという人よりは、変えたくないという人のほうが多いと思う。もし男性も女性も変えたくなかったら、その古い家制度の考えにより、女性が改姓することになる。そしてそれは、その古びた家制度の考えをさらに浸透させ男性優位の社会に拍車をかけることになる。
日本は技術的には先進国かもしれないが、社会倫理的には新興国なのだろう。このまま倫理観が未発達の先進国でいいのだろうか?この悪循環を断ち切るために、戸籍上の夫婦別姓を認めてみたらどうだろうか?うまくいかなかったら、その問題を一つ一つ解決していけばいいのではないか。