2010年6月23日水曜日

理系離れ

日本でも理系離れと言われるように、アメリカでも理系離れが進んでいる。理由はいろいろあるだろうが、その中でも最近気になることが二つある。

一つは、就職後の賃金の問題だ。特に製造業の賃金がサービス業や金融業に比べて低いということがあるだろう。賃金はいくら儲けたかで決まるものであり、設備投資などの大きい製造業では利益率は小さくなる上、技術的に良いものを作ったらその分儲かるものではないからなのだろう。残念ながら、儲けを決めるのは、それが技術的に優れているかでなく、客が欲しいものをいかに売ったかなのだ。逆に、技術的に優れすぎていて難しすぎると、大多数から敬遠されてしまい、もっと単純なものを強い企業が作り出し、その波につぶされてしまう。日本はそういう経験が多数あるのではないだろうか?

二つ目は、電気電子や情報系の技術はかなり進歩してきたため、新しく入るには最初に勉強するべきことが多すぎるが故にハードルが高くなってしまっていることだ。バイオテクノロジーのようにこれから進歩していく技術ならば、学生がこれからでも入りやすいに違いない。今まで増やしてきた電気電子情報系の学科の数を減らし、バイオ分野を増やしていけばいいだろう。

とはいえ、やはり一番の問題は賃金だ。工学系の学費は文科系よりも高く、レポートの数も多い。将来の賃金がそれに見合わなければ当然工学系を選ばないのは当然だ。

学生の理系離れを心配していかに科学が面白いかを説明するよりも、まず賃金が適正かを見直すことが先決だろう。


2010年6月22日火曜日

精神一到何事か成らざらん

人間にとって何が大切か?人生にとって何が大切か?悩みは尽きない。

苦しく悲しい人生よりも、楽で楽しい人生がいいのだろうか?そう単純なことではないだろう。苦しみから立ち上がるために努力をすることで成長するが、その状況ばかり続いたらもたないかもしれない。つまり、どちらも必要なのだと思う。

苦しみ、悲しみ、楽だ、楽しいという感覚は受け身であり、それに対して能動的な行為が求められるはずである。自分の理想や望みを成し遂げようという意志、その意志に沿った行動が求められるのだ。

精神一到何事か成らざらん

自らの意志をもって何かを成し遂げる。それが人生かもしれない。

またシンガポール発見

今日またシンガポール関係のものを見つけた。

OMAPグループでlow power management技術のマネージャだった人間が、シンガポールのA-Starという会社に入った。A-Starはシンガポール政府のもつR&D機関のようだ。

これはこれでおもしろい。OMAPは買ってくれる会社も無いためすでに捨てられており、フェードアウトするのを待っているだけだ。その度重なるレイオフで、パワーマネージメント技術も特にインドでかなり広く出回っているが、シンガポールには入っていなかった気がする。

シンガポールがアグレッシブになってきており、興味が湧いてきた。

2010年6月17日木曜日

IPをインテグレートするためのツール

IPを作ったらインテグレートしなければならない。このためのツールが進化するだろう。

AMBAのような一般的なインターコネクトはツールがうまくやってくれたりするが、特定のIPやサードベンダのIPはまだ手動か特定のツールが必要だ。SOPC Builderは便利だが、独自内部バスというのが使いにくい。コンポーネントを自由につなげるCypressのPSoCの方が簡単でいい。

こういったFPGAやCPLD向けのツールが改善され、中小規模のチップには使用されていくのだろう。自分でつないでみたチップのモデルを使ってソフトのプログラミングをし、それで実際の動作確認までできればかなり効率もよくなる。さらにボードまで取り込んでやれればもっと都合がいい。

こういったツールを提供していくことが鍵になるだろう。

2010年6月16日水曜日

IPベンダの行く末

かつて、ASICベンダにとって、自社ファブのライン確保による安定した供給、豊富なIPポトフォリオが売りだった。ところが、ファウンダリが自社ファブの価値を無くし、多数のIPベンダがその価値を奪った。自社ファブでしか製造できず、独自開発のためすべてのIPを揃えるのに時間のかかる上、ライブラリの狭さによる制限は、ASICベンダにとって足かせにしかならなくなってきた。顧客は、IPやライブラリ、サポートツールやTATテーブルを作り、この電源はうちのボードにはないといった議論をしながら、ベンダ比較をするのである。

とはいえ、IPベンダだって楽ではない。自分だけで幅広いポトフォリオを揃えるというのは難しいのだ。だからSERDESのような多様な仕様に使い回せる汎用性の高いものを作り、レーンを増やす、スピードを上げる、パワーを落とすといった具合に改良していくのがいい。規格ものや特定用途のものは、コンペも多いし、次につなげにくい。本当に先を読む目のあるトップがいないと、次にあれを作ろうとし、やっぱりこれを作ろうし、と右往左往しているちに、つぶれるか吸収される。

CMOSファブがファンダリに集約されたように、CMOSプロセスも集約され、3社くらいに絞られるのだろう。CMOSベースIPのプロセスの種類もそのプロセスと同時に集約されるので、次の32nm/28nmのIPで勝てたところが最終的に生き残れるところなのだろう。最大の激戦区はSERDESだ。次にWirelessのAFE、センサーといったところだろうか。

生き残れなかったところは、どうなるんだろう?

2010年6月15日火曜日

Inphi IPOとシンガポールオフィス

Inphiのシンガポールオフィス新設とIPOのニュースから、Avagoを思い出した。去年IPOしたAvagoもシンガポールに人を動かしていた。

両方ともテレコムのAnalog/Mixed Signalという似た分野であり、またどちらもアジアの開発拠点としてシンガポールを選んでいる。シンガポールの物価はアメリカ並みであり、コスト的にはあまり貢献しないが、英語圏のアジアというところが米国企業のアジア拠点に適するのだろう。

外資系企業の工場における賃上げの嵐に苦しむ中国、思惑通りそれが少しでも中国の内需拡大につながればさらなる中国の発展がみられるのだろう。それは、中国に限らず近隣の東南アジアの発展にもつながっていくのだろう。

2010年6月12日土曜日

みんなの力

一人一人の力なんて限られている。でも、皆が集まれば、大きなことができる。世界も変えられる。
そういう歌を思い出した。


一人の小さな手 何もできないけど
それでも 皆の手と手を合わせれば 
何かできる 何かできる

一人の小さな目 何も見えないけど
それでも 皆の瞳で見つめれば
何か見える 何か見える

一人の小さな声 何も言えないけど
それでも 皆の声が集まれば 
何か言える 何か言える

一人で歩く道 遠くてつらいけど
それでも 皆の足踏み響かせば
楽しくなる 楽しくなる

一人の人間は とても弱いけど
それでも 皆が皆が集まれば
強くなれる 強くなれる

2010年6月11日金曜日

IP開発の方向

水平分業型の半導体産業の中で、IPプロバイダになろうとしてうまくいかなかった企業は数知れない。今はEDAベンダやFPGAベンダ、ファンダリがIPベンダとパートナーシップを組んで提供しているが、CadenceのDenali買収、SynopsysのVirage Logic買収のように、パートナーシップだけでなく、EDAベンダが取り込み始めた。digital IPはファンダリ、プロセスに依存せず、ツールさえサポートしていればいいので、EDAベンダが取り込むのはたやすいだろう。ユーザにしてみれば、EDAベンダが簡単に使えるように彼らのツールにうまく組み込まれたdigital IPの方が、小さいIP ベンダのIPよりも開発の手間がかからず、しかも他社によってすでにテストされたIPで信頼性が高いわけで、そちらを選ぶのは明らかだ。

一方、Analog IPのようにプロセステクノロジーに依存するIPはそうはいかない。プロセス毎に提供される必要があるので、ファンダリはもちろん、自社プロセスをもつ各企業がデザインする必要がある。逆に言えば、各自社IPを開発するコストが、自社プロセスを開発するコストにさらに上乗せとなり、かなりの数が見込めなければ、費用だけでなくスケジュールの面でもコストペナルティーとなってしまうのだ。つまり、自社プロセスの開発の負担を増やすことになる。

プロセステクノロジーの数自体が以前よりも減り、これもマスクコストや設備費の増大により、自然淘汰されているのだろう。だから、デジタルにおける自社ファブはかなり減ってきた。ペイしないので、手を引いたのだ。このことからも、Analog IPもまた自然淘汰されることが予測される。このことから、各大手ベンダーが開発するものは、汎用IPとなりにくい製品に特化されていくだろう。

IPextermeのような企業がIPの仲介業をしているが、IPを使うという業界の方向性にはあっているものの、汎用マイコンやAMBAのようなものでなくEDAベンダやファウンダリがサポートしていない特殊用途のIPに限られてくるに違いない。

こうしたIPをめぐる動きも、半導体業界の再編を引っ張る要因の一つなのだろう。

2010年6月3日木曜日

半導体業界

水平分散型半導体業界の先が、少しずつ見えてきたような気がする。

ファウンダリとメモリはほぼ決まっている。アセンブリは中国の会社が伸び、その他は自然淘汰されていくだろう。大規模ASICのみが残り、残りはCPLD,FPGAになっていくだろう。アナログですら、自然淘汰されていくだろう。高電圧やMEMS等の特殊プロセスを必要とするもののみがディスクリートとして残り、CMOSでできるアナログは、IPとしてしか残らないだろう。そのIPも、ディジタルIPはEDAツールベンダが抱え込み、アナログIPはASICベンダとFPGAベンダのみが持つことになる。同じファンダリを使ったとしても、プロセスが違うので両方必要になる。今はファンダリもIPを抱え込んでいるが、小規模ASICの数が減れば消えるだろう。プロセッサは、ARM, X86,MIPSになっている。

どこに行こうか?

2010年6月2日水曜日

半導体市場の変化

半導体の市場そのものが変わってきたのだ。

IBM, インテルが引っ張ってきた時代は、メインフレームやパソコンといった特定のハイテク機器やそのネットワークの進化に沿って、半導体も進化してきた。高集積化によりパフォーマンスの向上と低価格化を実現するという方向は明確だった。ここで問題になったのはムーアの法則のような技術的なことよりも、その市場がハイテク機器という特殊ユーザ向け市場から、一般ユーザ向け市場に裾野を広げたことなのだろう。これはパソコン機器等が大きく低価格化していることから明らかだ。その市場の変化に半導体ベンダが対応しなければ生き残れないのだ。

今まで最先端技術の開発を誇りに思ってきた技術者達は、その低価格の量産品開発に抵抗を感じているのかもしれない。でも考えてみれば、低コスト下の波に逆らえず、既に製造工場は中国や東南アジアにシフトしている。設計者もインドや中国にシフトせざるを得ないだろう。その結果、米国や日本で仕事がなくなる人間がでてくることになる。

それを回避する方法の一つは、安いレイバーコストに対応するためにオートメーション化を推進するためのプラットフォームの開発をすることかもしれない。その開発に人的リソースを投入し効率化を図れば、今はともかく、将来中国やインドのレイバーコストが米国や日本並みになったときでも低価格化に対応できる。

例えば、今は一つ一つ手でRTLを書いてインテグレーションしているが、SOPCBuilderやPSoCのようにRTLはかけなくても簡単にできるツールを開発すればいい。Place and Routeに関しても、FPGAを使えばクロックのアラインは手軽だし、大規模でなくかつ高速でなければ簡単に配置配線もできるのだから、FPGAのアーキテクチャを改良していけばいい。

そういったコアの開発のみ残し、あとはそれらを使うユーザ側のサポートということになるだろう。今週のHPのレイオフと内容は同じだ。シスアドはなくし、カスタマサポートをとるという。

これも一種の自然淘汰なのかもしれない。

2010年6月1日火曜日

変化よりも進化

変化と進化。この違いは何か? 変化とはただ変わることであり、進化とはステップアップを伴う変化である。

ダーウィンは、変化論とは言わず、進化論という。彼の理論では、それは進歩を伴う変化だったからだ。人間は、自分たちは変化してきたとは言わず、進化してきたという。文明も進化してきたという。進歩することを誇りに思っているからだ。

変化すれば、何かを捨てて、あるいは失って、代わりに何かを得る、もらうことになる。何かを得ることはいいことだが、失うのは難しい。本能的に拒んでしまう。だから、その得るものと失うものを天秤にかけて、同じ重さならば、変化しないことを選んでしまう。理由は、今あるものは確実であり、得られるというものの方が不確実だからだ。これが進歩ならば話は違う。天秤は得られるものの方が重いということを示しているからだ。

その結果、ただ変化しろと言われると、拒絶反応を示す。進歩を伴わないのに、今もっているものを捨てることはできないからだ。ただ、今持っているものの価値がなくなるということを突きつけられれば、今を捨て、自ら変化を望むだろう。自分の過去や現在を否定することは、さらに難しいのではあるが。

人間は変化が嫌いなのではない。これは、ここまで進化してこれたことからもわかる。状況の変化に適応するために、常に進化してきたのだ。今も進化の時だ。過去を捨て、新しい進歩への一歩を踏み出そう!