2010年6月11日金曜日

IP開発の方向

水平分業型の半導体産業の中で、IPプロバイダになろうとしてうまくいかなかった企業は数知れない。今はEDAベンダやFPGAベンダ、ファンダリがIPベンダとパートナーシップを組んで提供しているが、CadenceのDenali買収、SynopsysのVirage Logic買収のように、パートナーシップだけでなく、EDAベンダが取り込み始めた。digital IPはファンダリ、プロセスに依存せず、ツールさえサポートしていればいいので、EDAベンダが取り込むのはたやすいだろう。ユーザにしてみれば、EDAベンダが簡単に使えるように彼らのツールにうまく組み込まれたdigital IPの方が、小さいIP ベンダのIPよりも開発の手間がかからず、しかも他社によってすでにテストされたIPで信頼性が高いわけで、そちらを選ぶのは明らかだ。

一方、Analog IPのようにプロセステクノロジーに依存するIPはそうはいかない。プロセス毎に提供される必要があるので、ファンダリはもちろん、自社プロセスをもつ各企業がデザインする必要がある。逆に言えば、各自社IPを開発するコストが、自社プロセスを開発するコストにさらに上乗せとなり、かなりの数が見込めなければ、費用だけでなくスケジュールの面でもコストペナルティーとなってしまうのだ。つまり、自社プロセスの開発の負担を増やすことになる。

プロセステクノロジーの数自体が以前よりも減り、これもマスクコストや設備費の増大により、自然淘汰されているのだろう。だから、デジタルにおける自社ファブはかなり減ってきた。ペイしないので、手を引いたのだ。このことからも、Analog IPもまた自然淘汰されることが予測される。このことから、各大手ベンダーが開発するものは、汎用IPとなりにくい製品に特化されていくだろう。

IPextermeのような企業がIPの仲介業をしているが、IPを使うという業界の方向性にはあっているものの、汎用マイコンやAMBAのようなものでなくEDAベンダやファウンダリがサポートしていない特殊用途のIPに限られてくるに違いない。

こうしたIPをめぐる動きも、半導体業界の再編を引っ張る要因の一つなのだろう。